saji の量産開発について

インスタグラムにはアップしているのですが、僕の作っているスプーン「 匙 – saji – 」は量産品の開発を行っている状況にあります。


僕の開発は development のページに記していますが、設計から試作品の完成まで僕自身が行っています。
納得のいく試作品が出来たところで製作を外注に出すのですが、同じものをつくるというのは案外難しいもので、細々とした調整が必要になります。

設計データは 3D-CAD のデータを外注先と共有することが出来ますが、そのデータから型を削る工程は外注先のオリジナルになりますし、ブランクをプレスする工程も僕のハンドプレスと同じにはなりません。製作の工程が僕個人のスタイルと製作所の現場ではまったく異なるのですね。

故に同じものは出来ない。

ものづくりの難しいところなのですが、「同じものが出来てこない」と憤慨するのではなく、「なぜ同じものが出来ないのか?」という視点に立つと、ものづくりの難しさは愉しさに生まれ変わります。個人プレイから製作所を含めたチームプレイへと考え方を変えることで、僕の理想とするスプーンをつくるという過程はより深みが増して、チャレンジングで面白いものになります。


「視点を変える」ことが大切なのです。

でもなかなか難しい。
「視点を変える」ためには、それなりに知識が必要ですし、そのための学習も要るからです。

「なぜ同じものが出来ないのか?」という視点に立つにはものづくりの工程を知る必要がありますし、金属材料とその加工法、加工機の特性なども考えなければなりません。「同じものをつくって欲しい」と言うだけで業者さん任せにしてしまうのは簡単ですが、それでは「同じものをつくる」過程を自分の知見として得ることは出来ませんし、僕の能力は進歩しません。

「同じものが出来てこない」というものづくりの壁を自分自身の意思で乗り越える。
その過程を愉しむことが出来るのは、僕自身の向上心によるものかなぁと思っています。

自分を高めようと思う向上心こそが、ものづくりを、ひいては人生を愉しむためのパワーなのですね。