Blogにて投稿しましたが、「 匙 – saji – 」のカラーは光の波長を意識して設定しています。
参照:Blog投稿「カラーロジック その1」「カラーロジック その2」「カラーロジック その3」
ここでは「 匙 – saji – 」のカラーの設定意図について、開発者の考えをまとめます。
可視光線、光の波長と色覚
人間の眼に見える色は光の波長を網膜が捉えて、その特性から脳みそが色を付けています。
光自身は色を持ってはいません。光を網膜で認識して脳みそで着色しているのです。
網膜のセンサーは動物の種類によって異なり、それぞれ色は異なって見えています。人間は赤と青と緑の三つのセンサーを持っていますが、例えば身近な犬や猫といった哺乳類の網膜は青と赤のセンサーしか持っていません。このため犬や猫の色覚は人間よりも幅が狭くて、青と黄色の世界で周囲を見ているのだそうです。これに対して魚は網膜のセンサーを四つ、赤、青、緑に加えて紫外線域を認識しています。人間よりもより多彩な色を認識しているということです。
このことから「 匙 – saji – 」のカラーは色という概念を外れて、光の波長をカラー設定の根拠とすることにしました。
光線の届く範囲
光線は障害物にぶつかることで途絶えたり、弱まったりします。
日陰に入ると光は弱まりますし、水中では水質によって水面下に降り注ぐ光線の強さは変化します。
また光の照射する角度によっても光線の強さは変化します。
水質は水中に浮遊するプランクトンや水中に生息する動植物の老廃物などによって異なり、透明な水質ほど波長の短い光線が透過しやすく、水質が悪化するにしたがって透過する光線の波長は長くなっていきます。
海が青く見えたり湖が緑に見えるのは、透過する光線の波長が水質によって異なるためで、それぞれ透過しやすい光線の波長の色を人は認識しています。
光線は水質によって減衰していくので、水深が浅ければ光は強く、深まると光は弱くなります。
水質によって「届きやすい光線の波長は変化する」、また「水深によって光線の強さは変化する」ということです。
魚のポジション
カラーを考えるにあたって、もう一つ考慮する必要があります。
それは魚がスプーンをどの位置から見ているか、魚のポジションです。
表層のレンジをリトリーブしたとき、魚が下から上に向かってスプーンを見ています。
中層のレンジをリトリーブしたときは、魚が横からスプーンを見ていて、ボトムをリトリーブしたときは魚が上から下にスプーンを見ているはずです。
水中で下から上に向かってスプーンを見ると、水面に反射する光の中にスプーンは影を落としシルエットが強く見えます。
反対に上から下に向かって見た場合には、底面の暗闇の中に同化してスプーンが見えます。
魚のポジションによってスプーンの見え方は変化していると考えられます。
「 匙 – saji – 」のカラー設定
「 匙 – saji – 」は光の波長に合わせて基本色を7色としています。
紫、青、緑、黄、橙、赤、赤紫、の七色で、リトリーブする水深や魚のポジションに合わせられるように淡い色と原色系の二つの濃淡のカラーを設定しています。(ゆくゆくは更に濃い色も設定しようと思っています)
淡い色。
上段左から、紫、青、緑、黄、下段左から、橙、赤、赤紫です。
原色に白を加えて色を薄めていて、裏と表で白の分量を変化させることで色の濃さを変えています。
原色系。
上段左から、紫、青、緑、黄、下段左から、橙、赤、赤紫です。
原色に表面は白を加えて色を薄め、裏面は黒を加えて色を濃くしています。
エキストラカラー。
光の波長の概念に、真鍮の鈍い輝きと蛍光色を加えた明滅の強いカラー設定です。
上記の14タイプのカラーに加えてサシ色として使用することを想定します。
「 匙 – saji – 」カラーロジック
釣りをしているとき、カラーの選択に悩むことがありますよね。
光の波長を知る前の僕は「過去に釣れた色」をメインに、似たようなカラーを選択することが多かったです。
例えば、カラシ色やオリーブ色など、かなり偏っていました。
「 匙 – saji – 」を開発するにあたってカラー設定の根拠が必要だと思い、光の波長という原理を取り入れることにしたのです。
この色が釣れるというモノではなくて、アングラーがスプーンのカラーを選ぶときに固定概念を薄めてロジカルに思考できるようにする。
この思想が「 匙 – saji – 」のカラーロジックなのです。
光の強さによって水中に届く光の波長は変化しています。
例えば朝夕の光の弱い状況では水中には長い波長の光が届きやすく、晴天昼間の光の強い状況では短い波長の光が届きやすくなります。
「光が届きやすいということは、その色がより目立って見えるはず」というのがこのロジックの設定根拠です。
どんなカラーでも釣れるのですが、このロジックに則って選択したカラーの方が魚の反応が長続きするように感じられます。
「この色を選択しなさい」ということではなくて、スプーンのカラーを選択するときの思考の一助として捉えて頂ければと思っています。
カラーロジックチャート
光が強いと感じるときは波長の短い方の色を選択し、光が弱いと感じるときは波長の長い色を選択する。
色の濃淡はリトリーブするレンジや水質を見て選択します。
淡い色は表層や浅いレンジで魚が下から見上げるポジションで釣りをするときにシルエットを弱く見せることが出来ます、またクリアな水質に合います。
濃い色は魚が上か横から見るポジションのときにスプーンのシルエットが背景に埋没させないようにすることが出来ます、また濁った水質に合います。
ナイターなどで光が非常に弱い状況では色覚の概念ではなくて、シルエットや濃淡が魚に刺激を与えるので、濃い色や蛍光色を選択する。
以上が「 匙 – saji – 」のカラーロジックになります。
「これでなければダメ」という原理原則ではなくて、カラー選択に迷ったときに「光の強さ」と「水質」を意識して活用するひとつの考え方になります。
「 匙 – saji – 」だけでなく、手持ちのルアーのカラーを選択する時の思考法にもなりますので、ご活用して頂ければ幸いです。