4タイプある「匙 – saji -」の使い方について、開発者の意図を Tips にまとめます。

1.ローテーションの考え方「数あるスプーンの一員として」

ポンドの状況やトラウトのコンディションによって、使用するスプーンは変わります。
自分の得意なベーススプーンで釣りを始めてレンジやカラーを探り、そうして「感じた」ことから「考えて」次の戦略を立てる。そしてスプーンを異なるタイプに変えて、また「感じて」そして「考えて」・・・そのサイクルを繰り返すゲームを愉しみながら釣果を得ていく。そんな風にスプーンゲームを進める中で、「小さくて軽い」マイクロスプーンは最終手段ともいえます。「匙 – saji -」はこのマイクロスプーンのカテゴリーになります。

「匙 – saji -」を使うタイミングですが、開発者としては次のような意図で考えています。

① マイクロスプーンゲームの中に「匙 – saji -」を挟む

タイプの Tips の中に、具体的な特性として「ピッチ周波数」と「泳ぎのタイプ」を記しました。「saji gou」はたくさんあるマイクロスプーンの中で「最も泳ぎの強い」レベルの特性としていて、また「saji jak」はその反対で「最も泳ぎの弱い」レベルの特性としています。
マイクロスプーンゲームの中に「匙 – saji -」を挟むことによって、「どんなタイプのスプーンが釣れるのか」という考察をするための「モノサシ」として「匙 – saji -」と「このサイトでオープンにしているデータ」を判断材料にして、愉しんで頂ければと思います。

② 「匙 – saji -」でマイクロスプーンを練習する

マイクロスプーンを使ったことのないアングラーも多いと思います。軽量であるが故に、「投げにくい」のではないか、「自分には扱えない」のではないか、そんな不安も感じる方もいるかも知れません。でも恐れることはありません、管理釣り場に数回でも通ってキャストが出来るようになった方であれば、エリアトラウト用のロッドと適切な太さのライン(0.6号以下がお勧めです)を準備することで、思ったより簡単に扱うことが出来ると思います。
「匙 – saji -」はスプーンの表面積と重量とのバランスを考慮してキャストが難しくなりすぎないように配慮していて、特に「saji gou 08」の 0.9g と「saji jak 07」の0.8g はスプーンの表面積に対するウェイトを重めの設定としています。このサイトで「匙 -saji-」の泳ぎについて予備学習して、実際にポンドで「匙 -saji-」を使ってみることで、マイクロスプーンの泳ぎの特性を理解しながら練習することができます。特性を理解するということは、アングラーの強みとなりますし、よりゲームを面白くする要素にもなります。「匙 – saji -」を練習台として、マイクロスプーンの世界に入って頂ければと思います。

2.シーンに応じた4タイプの使い分け

「匙 – saji -」は開発を進めるなかで連鎖的にバリエーションが増加し、結果として4タイプを市販することとしました。
ここでは開発の経緯と合わせて、使用するシーンについて設計者の意図をまとめます。

① 「saji gou 08」0.9g

「匙 – saji -」の中で最初に開発着手したスプーンです。
初心者視点で感じる「マイクロスプーンは難しいという印象」を和らげて、「釣果に繋がりやすい」マイクロスプーンのゲームをたくさんの人に愉しんでもらいたいという想いで、このスプーンの開発に着手しました。目標として「大きくワイドな振り子運動と安定性の両立」、「キャスタビリティが良く扱いやすい特性」を挙げて、「トラウトを惹く力が強くて扱いやすい」マイクロスプーンを目指しました。
このスプーンの得意なシーンは「表層に見えるトラウトの下を狙う」ときです。
表層の見えるトラウトにも有効なのですが、このスプーンの魅力は安定した大振りの泳ぎとその安定性で、幅広いスピードレンジに対応するところです。この特性から「見えるトラウトの下のレンジをゆっくりリトリーブする」という使い方がマッチすると思います。

② 「saji gou 06」0.7g

「saji gou 08」0.9g を開発する過程で、「saji gou 08」の泳ぎのまま、「よりスローに引けて」「より浅いレンジをコントロールしたい」、という欲求が生まれて開発したスプーンです。背反としてキャスタビリティは若干スポイルされましたが、対応できるトラウトの幅を広げることができました。
得意なシーンは 0.9g と重なるのですが、よりスローに引いてスプーンをゆっくりとトラウトに見せたいとき、表層に見えるトラウトをサイトフィッシングで狙いたいときに、使用するのがマッチすると思います。

③ 「saji jak 07」0.8g

「saji gou 08/06」を開発する中で、レンジやスピードのコントロールだけでなく、スプーンの泳ぎによってトラウトの反応が異なる場面に多々出会い、「より細かく弱い泳ぎ」の必要性と、「表層直下のレンジを安定して泳がせたい」という欲求を感じて開発したスプーンです。背反として極低速域の安定性を失いましたが、多用するリトリーブスピードにおいて「saji gou 08/06」との明らかな特性の違いを具現化できました。
このスプーンの得意なシーンは「表層に見えるトラウトをサイトで狙う」ですが、細かく弱い泳ぎで「表層に見えるトラウトの下を狙う」ときも有効です。またロッドを細かくシェイクしたときに左右にダートするように応答する、特徴的な誘いの挙動を生み出すことが出来ます。「細やかなピッチで身悶えるような弱い泳ぎ」と、「揚力が強くて表層に浮かびやすい」ところが特徴で、「saji gou 08/06」で反応が鈍くなった状況で使用するローテーションを想定しています。

④「saji jak 05」0.6g

「saji jak 07」0.8g を開発する過程で「表層ゼロレンジのコントロール性を更に高めたい」という欲求が生まれて開発したスプーンです。
どのスプーンも開発に苦労があったのですが、とりわけこのスプーンは難産でした。「saji jak」の高い揚力特性に対して絶対的な重量の軽さが泳ぎの質をスポイルする方向に働いてしまったためです。「表層ゼロレンジのコントロール性を高めたい」という狙いを得つつ、「saji jak」0.8g の泳ぎの質を維持するためのチューニングとして、「saji jak」0.6g は極小径のリングと極細のフックを組み合わせています。
ブランクのウェイトに対してフックを重くすると泳ぎは安定していくのですが、背反としてヒラヒラとした魅力的な泳ぎがスポイルされる傾向となります。「saji jak」0.6g は理想特性を得るためにリングとフックを専用設定としました。
「匙 – saji -」のシリーズの中では、最もアンバランスで使い手を選ぶ類いのスプーンですが、開発者としての思い入れは深く、フィールドテストで最も高い釣果が得られています。得意なシーンは「saji jak 07」0.8g と同様ですが、魚が追尾したときにイレギュラーなアクションを産みやすく、結果として魚の好奇心を煽る特性を持っています。